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がんばりましょう
クレヨンで書いた手紙

No. 2008年5月の出来事1

限界線

          

 先日、契約トレーナーの松本さん(クラブコング代表)に長野でトレーニング指導をいただいた。
 トレーニングを始める前、午前中に奉仕活動の一環として行ったゴミ拾い(スパイラルまでの約7キロの道路)によって背中と下半身に張りと疲れがあることを伝えた。
「じゃあ、軽めにやりましょう」(松本さん)
 関節の可動範囲、筋肉の柔軟性などを高める為の一連のほぐしが終わり、メインメニューへと移った。
「ウォーミングアップとして60キロのスクワットを15回。本番は、100キロのスクワットを10回行い、直ちに230キロのレッグプレスを15回。これを3セット。インターバルは30秒」と松本さんから指示が出た。
 言葉には出さないものの選手達の脳裏には、先の「軽めにやりましょう」の言葉に疑問符がついたに違いない。
 松本流トレーニングの特徴の一つに、正確な動きで出なければ1回に数えないというものがある。したがって動きが悪ければ10回で済むところを何回でもやらなければならない。何回もやっているうちに体力はどんどん消耗し、筋肉も、関節も、神経も、思考も悲鳴を上げ、体が言うことを効かなくなってくる。そうなっても正確さを追求し、体が動かなくなるその瞬間まで正確な動作をしなければならない。自分勝手に動作を止めることも、休むことも出来ない。妥協も無いし、甘えも許されない。
 1セットの運動時間は2分足らずだが、その短い時間に葛藤に襲われる。肉体的に苦しくなり動きが鈍くなってくると、心の中の弱い自分は、「苦しい振りをしてその辺で止めてしまえ」と囁き、強い自分は「限界までやれる」と囁く。辛いことから逃げることは簡単だが、逃げたらどうなるかは良く解っている。「もう駄目だ」、「まだやれる」、一回ごとに葛藤が続き精神的に追い込まれる。
 肉体的に苦しいのは勿論、精神的にも苦しいのが松本流トレーニングの特徴の一つでもある。
 トレーニングが始まり、1セット目から太腿と背中の筋肉が張り、葛藤に襲われはじめた。2セット目、3セット目になると明らかに動きが鈍くなり、葛藤の度合いも増した。最後は予定の回数をこなせなくなった。(クラブコング合宿では、毎回のことである)
 呼吸も乱れ、まともに立ち上がれない状況の中で感じるのは、普段自分自身が勝手に作る「もうこれ以上は無理だ」という『限界線』は、かなり低い位置にあり、死ぬ気でやってみればその限界線は楽々超えられてしまうということだ。要するに自分の可能性は、本当に死ぬ気でやれば広がり、それを繰り返すことで人間はより成長するのである。
 2010年バンクーバーオリンピックで私は、そのことを証明してみたい。

 

平成20年5月 越 和宏