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がんばりましょう
クレヨンで書いた手紙

No. 2005年11月の出来事2

ラッキーボーイ

          

 ただ単に、『運が良い』というものではなく『九死に一生』とでも言った方が正しいのかもしれない。そんな一日であった。

 11月17日、ワールドカップ第2戦がアメリカ・レイクプラシッドで行われた。気温2℃、氷温-5℃、例年に比べるとかなり暖かい。屋外競技は天候に左右されやすい。そのため、何日も前から大会当日の天候をインターネットでチェックする。予報では、大会当日の天候は雪。(先週の第1戦で苦戦を強いられた私は、滑走順が10人目から20人目の第2シードになってしまい、天候が悪い場合にはさらに不利になってしまう)最近の天気予報の確立が高いことは承知していたが、遠足の前日のように晴れることを願った。(テルテル坊主を作るのを忘れていた)
 当日、起床と同時に窓の外を見る。天気予報が外れた。雪は降っていなかった。午前7時30分、競技場に到着。一粒一粒が数えられるほど本当にわずか雪が舞い降りてきた。午前9時04分、レースが開始。一粒一粒数えられた雪が確実に激しさを増していった。一人、二人・・・、順番が進むに連れコースには雪が降り積もった。

 17番目、私の順番がきた。スプリントのイメージ、滑走のイメージを再確認し、全身の神経を集中し、スタートを切る。練習の時にはない加速を感じ、その勢いを持続しソリに乗り込む。と、その瞬間ソリに急ブレーキがかかった。体のバランスが崩れ、倒れそうになるのを堪える。雪にソリが取られたのである。何とかソリに乗り込むが、スタートタイムは、それまでの選手より0.8秒も遅い。
 気持ちを切り替えて1コーナー、2コーナーと滑り降りていく。10コーナーに差し掛かった瞬間、ソリのテールが横滑りを起こした。立て直す余裕もなく、高さ5メートルはあるかと思うカーブの庇を直撃し、その反動でソリが急降下、今度は一番底の壁を直撃した。普通ならソリと体が逆さまになり転倒する。しかし、必死に体勢を立て直しゴールまでたどり着く。59秒07。トップとは5秒遅れ、間違いなく最下位である。

 スケルトン人生でどんなに悪くても最下位はなかった。初めての経験に言葉では表せない失望感に全身が包まれた。雪は降り続いていた。むなしく着替えを済ませる。気力がなく、全ての思考回路が遮断されていた。
 周囲がざわつき始め、やがて「キャンセル」という言葉が耳に入った。何人かの選手が私の方に視線をよこした。ある者は「ラッキーボーイ」と言い、私の肩をたたいた。悪天候のため、競技の公平性を欠いたとの理由で1本目の滑走全てがキャンセルとなり、再度全選手が1本滑走し、そのタイムで順位を決めるとの判断がされたのである。再競技が始まり、私の順番が回ってきた。1本目のようなミスはなく、ゴールする。56秒74、全体の17位。

 結果は悪いことに違いないが、『運』は失われていないことが証明されたレースであった。
 雪は、レースが終わる頃にはやんだ。

 

平成17年11月 越 和宏