KOSHI'S VOICE
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がんばりましょう
クレヨンで書いた手紙
No. 2005年8月の出来事
カルガリー遠征
7月下旬から8月上旬の短い期間だったが、カナダ・カルガリーを訪れた。
ノースウェスト航空機にてシアトル経由でカルガリー入り。ヨーロッパ路線に比べれば飛行時間も短く、一人ひとりの座席の前には自由に映画が見られるTVがある等、快適なのかもしれないがエコノミー席にじっくり10時間は正直キツイ。
この時期のカルガリーの気候は、気温30度、湿度20%という高温多湿の日本とは打って変わって快適な夏である。汗っかきの私だが、激しいトレーニングの後でも汗をかくことがない。また、太陽は夜の10時頃まで沈まないため、カルガリーに生活する人達は、アフター5からしっかりゴルフやラフティング、バーベキュー等の趣味を満喫している。観光と避暑を兼ねて訪れるなら最高なことには間違いないが、私の目的は、アイスハウス(インドアでの氷上スタート練習場)での片手押しの技術習得だった。
今さら説明することもないかもしれないが、スケルトン競技は、ソリに加速をつけるためスタート時に全速力でソリを押す。これが唯一の加速手段であり、その後は駄々ひたすら重力のままに滑り落ちるだけである。このスタートダッシュがゴールタイムの良し悪しを決めるといっても過言ではない。例えば単純にスタートタイムで0.1秒の差があるとしたらゴールタイムでは1秒以上の差になる(スタートタイムが遅いのが私のウィークポイントである)。ソリを押す方法については、特に決まりはないが地上高20cmのソリを全速力で押すともなるとその方法は限定されてくる。現在では、両手をサドル部分に添えて走る(雑巾がけのスタイル)「両手押し」と、片手をサドル部分に添え、もう片方の手は普通にランニングするように腕振り走る「片手押し」の2タイプが主流である。
私は、昨年まで両手押しをしていたが、今年から片手押しに挑戦している。何故、片手押しなのかについては、簡単に言うと片方の手を自由に動かせることで両足の可動域が広がり大きな動き、速い動きが出来るようになることから(両手押しは可動域の制限がある)、持っている力を無理なく推進力に変えることが出来、スタートタイム向上につなげられると考えるからだ。要するに、スケルトン競技用の走る技術をマスターするということである。しかし、片手でソリを押すのでバランスが取り辛く、失敗すれば逆にタイムを落すというリスクもある。
片手押しへの挑戦は、何もかもが簡単に進まない。最初から勢い良くソリを押し出そうとすると、勢いあまって溝から脱線してソリが真っ直ぐ走らない。両手を振るのなら問題はないが、片手のみを振るというのはバランスが取りづらい。バランスを取ることに集中するとソリに力が上手く伝わらない。足の運びを意識すると手の振りがバラバラになってしまい、時には同じ方向の手と足が一緒に動いていることがある。上手く加速がついたと思うと乗り込み時の手の組み換えに手間を取り減速してしまう。まだまだ沢山問題はある。今までは、体を使って汗をかいていただけだったが、今はそれに加え「頭を使って汗をかく」ことが多くなった。「そんなに難しいのなら今まで通り両手にすれば良い」と、思うかもしれないが、片手押しがはまった時にはかなりタイムが伸びる。スタートタイムの遅い私には、何とも魅力のある挑戦である。
アイスハウスの中はヒンヤリとし、じっと立っていると鳥肌が立ってくる。そこにスタートトレーニングの為にだけ作られた約150メートルの全面氷のコースがある。使用規則として試合同様にヘルメット、グローブ、スパイク、長袖、長ズボンを着用しなければならない。スタート台に立つと本番に似た緊張感が伝わってくる 走り出すと同時にスパイクがカチャカチャと音を立てて氷に突き刺さる。脚の運びを早くすると徐々に加速が増し、最高に達したところでソリに飛び乗る。この動作を繰り返し、繰り返し1時間目一杯行う。寒い室内でも汗だくになるほど運動量がある。
午前中は、ウェイトトレーニングか陸上トレーニングを3時間程度行い、午後は、スタートトレーニングを行うという一日のスケジュールで滞在期間中休みを取ることなく連日トレーニングに励んだ。 期間中に200本以上はソリを押したに違いない。 肝心な「片手押し」の成果だが、バランス、腕振り、脚の運び、接地等どれを取っても自分の理想としている形になるまでにはまだまだ時間が必要だ。200本以上押しても満足の出来るものは一つもなかった。しかし、絶望感ではなく、真っ暗だった暗闇に微かな明かりが見えてきたような希望が感じられた。具体的な理由はないが、感覚として感じるものがあった。
今回のカルガリー遠征は、非常に慌しいものであった。トレーニング以外の記憶は何もない。帰国後直ちにカルガリーでつかんだ感覚を基に理想とする形の削り出しを開始した。シーズンを迎えるまでの約一ヶ月半、辛く、厳しい道のりに違いないが、それを乗り越えた先には大きな喜びが待っていることを信じ頑張るしかない。
平成17年8月 越 和宏
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